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それでは、内分泌とは何でしょう。 |
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上の人体図に書かれていない器官に心臓・血管系があります。 |
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血管系は体外に通じていません。血管が体外に開放していると、 |
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出血で死んでしまいます。 |
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つまり、ホルモンとは血中に分泌される物質のことなのです。 |
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寄り道 |
出身校の群馬大学には、内分泌研究所という名の研究所がありました。 |
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その研究所を設立する際、交渉にあたった教授の話です。 |
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まず文部省に予算を計上するように要請するわけですが、文部省の役人がなかなか |
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首をタテにふらない。京都大学の霊長類研究所は有名ですから、 |
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ご存知の方も多いと思います。これを作る時に、文部省の担当者は京大側に、 |
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「レイチョー類」とはどんな鳥ですか、と質問したという話もあるそうです。 |
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霊長類を鳥だと思っている人に、学問的な説明をしても無理ですから、 |
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ある人が「ホルモン研究所」で要求しては、というアイデアを出したそうです。 |
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担当者がなんとなくホルモンに不安がある年齢だったので、予算が通ったという、 |
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ウソか本当かわからない話を聞きました。 |
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種類 |
ホルモンという概念は、独立した内分泌器官の研究から始まりました。 |
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視床下部・脳下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎等がそれにあたります。 |
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このうち、甲状腺からは全身の代謝を活発にするホルモン。 |
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副甲状腺からはCa代謝をコントロールするホルモン、副腎からは免疫を抑制するホルモンや |
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血圧を上昇させるホルモン等が分泌されます。 |
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これら以外に、膵臓・卵巣・精巣からもホルモンが出ています。 |
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卵巣からは女性ホルモン、精巣からは男性ホルモンです。 |
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膵臓からはインシュリンというホルモンが出ています。 |
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これらの臓器が前述の内分泌器官と違うところは、外分泌機能も持っているところです。 |
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膵臓は消化酵素である膵液、卵巣からは卵子、精巣からは精子が作り出されます。 |
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ところが研究が進むにつれて、従来、内分泌器官ではないと考えられていたところから、 |
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ホルモンが分泌されていることがわかりました。 |
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比較的早くにわかったのは、胃や腸からホルモンが分泌されていることで、 |
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これらは消化管ホルモンと呼ばれます。 |
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余談 |
群馬大学の第1外科の講師の先生で消化管ホルモンの研究をしている方がいました。 |
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その先生がホルモンに興味を持ったのは、次のようなエピソードからだそうです。 |
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若い時に出張先の病院で、交通事故で小腸にダメージを受けた患者が運ばれてきた |
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そうです。 |
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早速、開腹して損傷をうけた小腸を切断し、縫合したそうですが、その後から、 |
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ゲーゲー吐き出して何をしても嘔吐が止まらなくなったそうです。 |
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困り果てて、教授に相談すると、すぐに胃を切除しろと言われて、その通りに |
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したら嘔吐は止まったそうです。 |
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これは、胃から胃液特に胃酸分泌を促すホルモン、ガストリンが分泌されていて、 |
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胃酸がある程度多くなると、小腸内のPHが下がります。するとそれを感知した |
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小腸から、ガストリンの産生を抑えるホルモンが分泌されるという、 |
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ネガティブ・フィールドバック機構が働いているからなのです。 |
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つまり、小腸を切除すると胃酸分泌が抑制されなくなり、胃酸が限りなく分泌され |
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続けるため、吐き続けるというわけです。 |
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因みにその先生は、後に内分泌研究所の教授となりました。 |
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消化管以外にも腎臓や心臓からもホルモンが分泌されていることがわかっています。 |
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今回私が調べたらなんと、脂肪組織からもホルモンが分泌されているそうです。 |
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初めの話に戻ります。牛や豚の腸をホルモンと名づけた人は、消化管ホルモンの存在を |
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知っていた、ということになりませんが、これは大変な驚きです。 |
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もちろんこれは冗談で関西地方では捨てることを「ほおる」と言うらしいです。 |
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元来捨てる部分であった腸なので、「ほおる物」がなまって「ホルモン」になった、という説 |
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を聞いたことがあります。 |
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作用 |
ホルモンの働きを一言で言いますと、人体の恒常性すなわちバランスを保つということを |
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担当しているといわれています。 |
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例外は多数あります。血糖値を一定に保つというのもその典型例で、インシュリンや |
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グルカゴン、その他のホルモンによって大きく変動しないように調節されています。 |
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環境ホルモン |
俗に言う環境ホルモン、正しくは「内分泌かく乱物質」の話をいたします。 |
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定義にもいろいろありますが、とりあえず「外来性物質で無処理の静物の内分泌系 |
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に対しその固体や子孫の世代のいずれかの段階で、健康障害性の変化をおこす物質」 |
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というのがあります。 |
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自然界での出来事と内分泌かく乱物質との因果関係は、有機スズがある種の巻き貝 |
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の雌を雄化させること以外は、まだ解明されていないらしいのです。 |
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ただし、はっきりと因果関係のわかっているものもあります。 |
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かって流産予防として使われていた合成ホルモン剤がありました。 |
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当然妊娠中の女性に投与されましたが、本人には特に害は無く、生まれた子供にも |
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初めは特に問題がないように見えました。ところがその女の子が思春期になると、 |
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膣癌の発生をみたという有名な例がありまして、これなどは環境ホルモンというよりも |
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薬の副作用、薬害だと私は思います。 |
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ご清聴ありがとうございました。 |